半自動溶接機を買ったものの、ワイヤーの通し方も電流の合わせ方も分からず、箱から出したまま止まっている人は多いです。
半自動溶接機の使い方は、手順を分けてしまえば難しくありません。
電源の確認からワイヤーのセット、電流と電圧の合わせ方、トーチの動かし方、端材での練習まで、初めての1回目に必要なことを順番に書きます。
半自動溶接機の使い方はワイヤーを送りトーチを動かすだけ
半自動溶接は、溶ける材料になるワイヤーを機械が自動で送り出し、トーチの動きだけを人が受け持つ溶接です。
スイッチを握ればワイヤーが出続けるので、人がやることはトーチの角度と距離と進む速さを一定に保つことだけです。
手棒溶接のように溶接棒を1本ずつ付け替える必要がなく、止めずに長い距離を溶接できます。
ワイヤーは機械が送り 角度と速さは人が決める
「半自動」と呼ばれるのは、送り出しを機械が、狙う位置と動かし方を人が受け持つからです。
そのため機械の設定が合っていても、トーチの持ち方がぶれるとビードは波打ちます。
反対に、動かし方さえ一定にできれば、慣れていない人でも見た目のそろったビードが引けます。
ガスありとノンガスで向く場所が違う
半自動溶接は、溶けた金属を空気から守る方法で呼び名が変わります。
DIYで多い100Vの機種はノンガス専用か、ガスとノンガスの兼用がほとんどです。
| 種類 | 守り方 | 向く金属 | 向く場所 |
|---|---|---|---|
| CO2溶接 | 炭酸ガス | 鉄 | 風の無い屋内 |
| MAG溶接 | アルゴン80%と炭酸ガス20%の混合ガス | 鉄 ステンレス | 風の無い屋内 |
| MIG溶接 | アルゴンなどの不活性ガス | アルミ ステンレス | 風の無い屋内 |
| ノンガス | ワイヤーの中の薬剤 | 鉄 ステンレス | 屋外や風のある場所 |
ガスを使う溶接は風に弱く、屋外ではガスが流されて穴だらけのビードになりやすいです。
庭や駐車場で使うなら、ノンガスのほうが扱いやすいですよ。
ただしノンガスはスパッタや煙が多めなので、仕上がりの見た目を気にするものはガスありのほうがきれいに仕上がります。
溶接の前に電源とブレーカーと作業場所を確かめる
ここを飛ばすと、スイッチを入れた瞬間にブレーカーが落ちたり、服に火が付いたりします。
最初に確かめるのは、機械の電源と家のブレーカー、溶接できる板厚、それから作業場所の3つです。
100Vで溶接できるのは板厚2mm前後まで
溶接機の専門店の目安では、板厚2mmまでなら100Vでも溶接できます。
2〜5mmなら200Vがすすめられていて、5mmを超えると200Vが必要です。
家庭のコンセントで使う100Vの機種は、薄い鉄板の補修や小物づくりに向いていると考えておきましょう。
もうひとつ見ておきたいのが入力電流です。
家庭のコンセントの回路は20Aのブレーカーにつながっていることが多く、取扱説明書の入力電流がそれを超える機種は途中でブレーカーが落ちます。
同じ回路で電子レンジやドライヤーを使っていると落ちやすくなるので、溶接中は止めておくと安心です。
使用率60%なら10分のうち6分まで
溶接機には「使用率」という数字があり、10分のうち何分溶接を続けてよいかを表しています。
使用率60%なら6分溶接して4分休ませる、30%なら3分溶接して7分休ませる、という意味です。
100Vの小型機は使用率が低めのことが多く、長い距離を一気に溶接すると保護回路が働いて止まります。
燃えやすい物を片付け 肌を出さない服装にする
溶接中は火花とスパッタが周りに飛びます。
作業する場所の周りから、段ボールや木くず、オイルの缶を片付けてから始めましょう。
アークの光は目と肌を傷めるので、遮光面と革手袋、長袖の作業着は必ず着けてください。
化学繊維の服はスパッタで溶けて穴があきやすいので、綿の作業着が向いています。
溶接の煙(ヒューム)を吸わないよう、屋内なら窓とシャッターを開けて風を通します。
ワイヤーのセットは送り出しテストまでやって終わり
買ったばかりの溶接機は、ワイヤーを本体に通すところから始まります。
ワイヤーを通したら、トーチの先から実際に出てくるまで送り出しを確かめて、そこで初めてセットが終わります。
メーカーによって細かい部分は違いますが、流れはどの機種もほぼ同じです。
- 電源プラグを抜いてから作業を始める
- トーチの先のノズルを外し、その奥のチップも外す
- 本体のカバーを開けて、ワイヤーのリールを軸に取り付ける
- ワイヤーの先の曲がった部分をペンチで切り落とす
- ワイヤーを送りローラーの溝に沿わせて、トーチ側の穴に差し込む
- ローラーを押さえるレバーを戻してワイヤーを挟む
- 電源を入れ、トーチケーブルをまっすぐ伸ばしてからスイッチを握る
- ワイヤーがトーチの先から出てきたら、チップとノズルを付け直す
工具店が紹介しているスズキッドの機種の例では、送り速度のダイヤルを8〜9に上げてトーチスイッチを握り、ワイヤーを送り出しています。
ケーブルが曲がったままだと途中で引っかかって出てこないので、床にまっすぐ伸ばしておくのがコツです。
カバーのネジは締めすぎると部品を傷めるので、軽く止まるところまでで十分です。
チップの穴の大きさは、ワイヤーの太さに合わせます。
0.8mmのワイヤーなら0.8mm用のチップを使い、太さが違うとワイヤーが詰まったりアークがふらついたりします。
電流と電圧は板厚から決めて端材で合わせる
電流と電圧の数字は、自分で一から考えなくて大丈夫です。
取扱説明書の条件表から板厚に合う数字を選び、同じ厚さの端材で溶接してみて少しずつ直すのがいちばん早いです。
機種によっては板厚を選ぶだけで電流と電圧が決まる自動設定もあります。
合っているかどうかは、アークの音とビードの形で分かります。
電流と電圧が合っていると「ジー」という細かく続く音になり、ビードの幅もそろいます。
下の表の症状が出たら、ひとつずつ数字を動かしてみてください。
| 出た症状 | 考えられる原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 裏まで穴があく | 電流が高すぎる | 電流を下げるか進む速さを上げる |
| 表面に乗っているだけで溶け込まない | 電流が低すぎる | 電流を上げる |
| 火花の粒が多く飛ぶ | 電圧が合っていない | 電圧を少し下げて音を聞き直す |
| ビードが盛り上がりすぎる | 進む速さが遅い | 同じ設定で速さを上げる |
一度に電流と電圧の両方を変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。
変えるのは1回に1か所だけにして、決まった数字は板厚ごとにメモしておくと次回から迷いません。
トーチは10mm離して10〜15度傾け一定の速さで動かす
設定が決まったら、いよいよトーチを動かします。
母材からチップまでの距離はおよそ10mm、トーチの傾きは10〜15度にして、同じ速さで動かすのが基本です。
この3つがそろうと、ビードの幅と高さがそろいます。
初めてなら進む方向にトーチを傾ける前進法から
トーチの動かし方には、進む方向に先を向ける前進法と、反対に向ける後退法があります。
前進法は溶けていく先が見やすく、初めての人に向いている動かし方です。
溶け込みを深くしたい厚めの板では後退法が使われるので、慣れてから試すとよいでしょう。
速さはアークの音と溶けた部分の大きさで決める
速く動かすとビードは細く浅くなり、遅いと盛り上がって熱が入りすぎます。
目で見るのは、アークの下にできる溶けた金属のたまり(溶融池)の大きさです。
この大きさが変わらない速さで進めると、仕上がりがそろいます。
距離が離れすぎると音がバチバチと荒くなり、近すぎるとチップが母材に当たって傷みます。
薄い板ではトーチを左右に振るウィービングは控えめにして、まっすぐ引くほうが穴があきにくいです。
初めての1回目は端材に10cmの線を引く練習から始める
いきなり作りたいものを溶接すると、設定と動かし方のどちらが悪いのか分からないまま材料が傷みます。
最初は作るものと同じ厚さの端材を用意して、10cmのまっすぐな線を何本も引く練習から始めるのがおすすめです。
練習は次の3つの順番でやると、何ができていないかが分かりやすくなります。
- 平らな端材の上に10cmの線を引き、幅がそろうまで繰り返す
- 2枚の端材を突き合わせて、端を2〜3か所だけ点で止める仮付けをする
- 仮付けした2枚を端から端まで溶接し、裏まで溶けているか確かめる
溶接する前には、母材の油や塗装、さびをワイヤーブラシなどで落としておきます。
汚れたまま溶接すると、ビードに小さな穴があいたりスパッタが増えたりします。
アース(母材側のクリップ)は、塗装を落とした金属の地肌にしっかり挟んでください。
練習で引いた線は、表だけでなく裏も見ましょう。
裏側にうっすら焼けた跡が出ていれば、しっかり溶け込んでいる目安です。
溶接したばかりの母材は、見た目が変わらなくても高い熱が残っています。
素手で触らず、冷めるまでは燃えやすい物の近くに置かないようにしてください。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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