組み立て家具や自転車の説明書に「スパナで締める」と書いてある。家にあるのはモンキーレンチだけで、これで代わりになるのか分からない。そこで止まっていませんか。スパナとは、口が開いた工具でナットの2面を横からはさんで回す物で、口が閉じたレンチとは力のかかり方が違います。読み終えたら、手元のナットに合うサイズを測って、なめずに締めたり緩めたりできます。
スパナは口が開いた工具、レンチは口が閉じた工具
スパナは、六角のボルトやナットを締めたり緩めたりする工具です。先が「コ」の字に開いていて、ナットの向かい合う2面をはさんで回します。日本では、この口が開いた物をスパナ、口が輪になって閉じた物をレンチと呼び分けています。
もともとは同じ工具を指す言葉で、スパナはイギリス英語、レンチはアメリカ英語です。だから海外の説明書では、口が開いた物もレンチと書かれていることがあります。日本の呼び分けは目安で、はっきりした決まりではありません。
口が開いているので、ナットの横から差し込めて、締めたあとは横にずらすだけで外せます。配管の途中や壁ぎわなど、上からはめられない場所で使えるのがスパナの利点です。その代わり、ナットに触れているのが2面だけなので、強い力をかけると口が開いてナットの角をなめます。
めがねレンチは輪でナットの6つの角を全部つかむので、外れにくく、強い力をかけられます。速く回すのはスパナ、強く締めたり固い物を緩めたりするのはめがね、この分け方で覚えておくと工具選びで迷いません。
種類は両口、片口、薄口、コンビネーションの4つ
スパナと名の付く物は、形で4つに分かれます。両端に違う口幅が付いた両口、片側だけの片口、厚みを薄くした薄口、反対側がめがねになったコンビネーションです。家庭でいちばん多く使われているのは両口で、次がコンビネーションです。
| 種類 | 形 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 両口スパナ | 両端に大きさの違う口。「12×14」のように刻印 | 1本で2サイズ。家具、自転車、車のバッテリー端子 |
| 片口スパナ | 片端だけに口。柄が長め | 機械の調整、同じサイズを何度も回す作業 |
| 薄口スパナ | 普通の物より厚みが薄い | 狭いすき間、ナットが2つ重なった所、厚みの無いナット |
| コンビネーションレンチ | 片端がスパナ、反対がめがね。両端とも同じサイズ | スパナで速く回し、めがねで本締め。車、バイク |
モンキーレンチは、口が開いているのに名前はレンチです。ねじで口の幅を変えられる例外の1本で、サイズが分からないナットに使えます。ただし口にがたがあるのでなめやすく、固いナットには向きません。
コンビネーションレンチは、仮締めと本締めを1本で済ませられます。スパナ側で速く回して、最後にめがね側に持ち替えて締めます。車やバイクを触る人が最初に選ぶのは、たいていこのセットです。
サイズは「12×14」の刻印とナットの二面幅で合わせる
スパナのサイズは、口の幅をmmで表します。ナットの向かい合う辺と辺の距離(二面幅)を測って、同じ数字の口を選びます。両口スパナなら「12×14」のように刻印されていて、片側が12mm、反対側が14mmという意味です。
家庭の家具、自転車、車で多いのは10mm、12mm、13mm、14mm、17mmです。同じ太さのボルトでも、規格の違いで二面幅が違うことがあり、M8のナットには12mmの物と13mmの物があります。迷ったら、定規かノギスをナットに当てて測ってください。
アメリカ製の家具や工具には、インチで表すユニファイねじが使われています。mmのスパナでは合わないので、インチ用を別に用意します。ねじの規格はJISの表で二面幅を確かめられ、リツールの記事でもJIS規格の二面幅を見て選ぶよう書かれています。
使い方は平行に奥まで差し込み、力を入れすぎない
スパナでナットをなめない使い方は、難しくありません。ナットに対して平行に、奥に突き当たるまで差し込んでから、力を入れすぎずに回す、これだけです。ロイヤルホームセンターの解説でも、平行に、奥まで、力を入れすぎない、の3つが基本として書かれています。
- ナットの二面幅に合う口を選ぶ
- 手でボルトとナットを回して、止まるところまで仮締めする
- スパナの口を、ナットと平行にして奥まで差し込む。斜めに浅くはめない
- 回す向きの先に、自分の顔や反対の手が無いことを見る
- 柄を握って、手の力だけでゆっくり回す。止まったらそこで終わり
- 締め終わったら、口を横にずらして外す
スパナの口は、柄に対して15度の角度が付いています。狭い場所で1回しか回せないときは、スパナを裏返すと口の角度が変わり、もう1回かけられます。表と裏を交互に使うと、少ししか回せない場所でも進みます。
やってはいけないのは、柄をハンマーでたたくこと、柄にパイプをかぶせて長くすること、体重をかけることの3つです。どれもスパナが傷むか、外れたときに大けがをします。そこまでの力が要るナットは、次に書くめがねレンチかソケットレンチを使う場面です。
モンキーレンチは下あごに力をかけない向きで回す
家に1本だけあるのがモンキーレンチ、という人は多いはずです。ウォームを回して口をナットにぴたりと合わせ、動かない上あごに力がかかる向きで回します。動く側の下あごに力がかかる向きで回すと、ウォームに負担がかかって壊れます。
口を合わせるときは、ナットをはさんだあとにウォームをもう少し回して、がたが無いところまで詰めます。少しでも口が浮いていると、スパナより簡単になめます。回し終えたら口を広げて外し、ときどきウォームに油を差しておくと動きが渋くなりません。
モンキーレンチが向くのは、水道の蛇口まわりや家具など、たまに回す程度の場所です。月に何度も同じナットを回すなら、二面幅を測って合うスパナを1本足したほうが、なめる心配が減ります。
固く締まったナットはめがねレンチかソケットに替える
さびて固まったナットや、強く締めてあるナットは、スパナで無理に回さないでください。6つの角をつかむめがねレンチかソケットレンチに持ち替えるのが、なめずに外すいちばん確かなやり方です。スパナは2面しかつかんでいないので、力をかけるほど口が開きます。
手順は、浸透潤滑剤を吹いて10分ほど待ち、めがねレンチを上から奥まではめて、ゆっくり力をかけます。それでも動かないときは、柄の長いソケットレンチに替えると、小さな力で回せます。長い柄はてこの働きで力が増える分、締めるときに使うとねじ山を壊すので、緩めるときだけにしてください。
もし角がつぶれてしまったら、スパナではもう回りません。つぶれたナット用のナットツイスターやナットブレーカーという専用の工具があるので、ホームセンターで相談すると早いです。つぶす前に工具を替える、これがいちばんの対策です。
最初の1本はコンビネーションのセット、次に薄口を足す
これから買うなら、順番があります。最初はコンビネーションレンチの6〜8本組、次に狭い所用の薄口スパナ、サイズ不明のナット用にモンキーレンチを1本、この順でそろえると無駄がありません。家具と自転車と車のバッテリー端子くらいなら、最初のセットだけで足ります。
- 家にあるナットの二面幅を定規で測り、10、12、13、14、17mmのどれが多いかを見る
- そのサイズを含むコンビネーションレンチのセットを選ぶ
- 材質にクロムバナジウム鋼(Cr-V)と書かれた物を選ぶと口が開きにくい
- ナットが重なった所や、すき間の狭い場所があるなら、薄口スパナを足す
- サイズが分からないナットが多いなら、目盛り付きのモンキーレンチを足す
安い物と国内メーカーの物の差は、口の幅の精度に出ます。口がナットより少し大きく作られていると、そのぶんかかりが浅くなり、なめやすくなります。バッテリー端子や自転車の車軸のように、なめると困る場所に使うなら、国内メーカーの物を選んでください。
まずは、手元のナットを測るところから始めてください。二面幅が分かれば、買う物は決まります。買ったら、平行に奥まで差し込んで、力を入れすぎない。この3つを守れば、スパナでなめることはほとんどありません。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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