グラインダーという名前は聞くけれど、サンダーやドリルと何が違うのか分からない。ホームセンターの棚の前で止まって、そのまま帰った人も多いです。グラインダーは「砥石を高速で回して、削る、切る、磨く」ための電動工具で、先に付けるディスクを替えると仕事が変わります。読み終わるころには、自分の作業にグラインダーが要るか、要るならどの1台とどのディスクを買えばいいかが決まります。
グラインダーとは「砥石を回して削り、切り、磨く」電動工具
グラインダーとは、円盤の砥石(ディスク)を毎分1万回ほどの高速で回し、金属やコンクリートを削る、切る、磨くための電動工具です。金属の表面を平らにする、バリを落とす、鉄パイプを切る、古いペンキをはがす、といった作業に使います。
英語ではgrinderと書きます。日本の現場では、片手で持てる「ディスクグラインダー」を指してグラインダーと呼ぶことがほとんどです。アングルグラインダー、ディスクサンダーも同じ道具の呼び名です。
家庭で使うのはディスクグラインダー。工場の研削盤とは別物
グラインダーは大きく2つに分かれます。工場に据え付けて金属を精密に削る「機械研削盤」と、手で持って使う「自由研削盤」です。DIYや建築の現場で使うのは後者で、その代表がディスクグラインダーです。
自由研削盤には他に、細い軸の先に小さな砥石を付けるハンドグラインダー(リューター)、机に固定して刃物を研ぐ卓上グラインダー(ベンチグラインダー)があります。ドリルの刃や包丁を研ぎたいなら卓上、細かい彫りや模型ならハンド、それ以外はディスク、と覚えてください。
できることは4つ。切る、削る、サビや塗装を落とす、磨く
- 鉄パイプやボルト、アングル材を切る
- 溶接の盛り上がりやバリを削って平らにする
- サビや古い塗装を落とす
- ステンレスや石を磨いて艶を出す
4つのうちどれをするかは、本体ではなく先端に付けるディスクで決まります。だからグラインダーを買うときは、本体より先にディスクを決める人が上手に使えます。
なぜ木材はサンダー、金属はグラインダーなのか?
グラインダーは砥石を高速回転させて「削る」道具、サンダーは紙やすりを振動させて「磨く」道具だからです。木材は柔らかいので、高速回転の砥石を当てると一気にえぐれて焦げます。金属は硬いので、振動する紙やすりではほとんど削れません。
| 項目 | グラインダー | サンダー |
|---|---|---|
| 先端の動き | 砥石が高速で回る | パッドが細かく震える、または偏って回る |
| 先端に付ける物 | 砥石、ダイヤモンドカッター、ブラシ | 紙やすり、研磨布 |
| 得意な素材 | 金属、石、コンクリート | 木材、塗装面 |
| 主な仕事 | 切る、削る、サビ取り | 平らに磨く、塗装をはがす |
現場では、ディスクグラインダーを「ディスクサンダー」と呼ぶ人もいるので、名前だけで区別しようとすると迷います。見分けるのは動きです。ディスクが回るならグラインダー、パッドが震えるならサンダーです。
木を削りたい人は、グラインダーではなくサンダーを買う
木のテーブルの天板を平らにする、家具の塗装をはがしてから塗り直す、といった作業はサンダーの仕事です。オービタルサンダーかランダムサンダーを選んでください。
丸ノコ用のチップソーをグラインダーに付けるのは、保護カバーが付けられず跳ね返りも起きやすいため禁止されています。木の荒削りにグラインダーを使いたくても、その方法は選ばないでください。
金属を「磨く」だけでも、道具はグラインダー側
ステンレスの手すりの曇りを取る、溶接した後の表面をきれいにする、といった金属の磨きも、サンダーではなくグラインダーに磨き用のディスクを付けてやります。磨き用の多羽根ディスクは、羽根が回るときに空気を巻き込んで材料を冷やすので、ステンレスが熱で変色しにくいです。
逆に、車のボディや家具の塗装面を磨くのは、回転が遅く力の弱いポリッシャーやサンダーの担当です。グラインダーを当てると塗装が一瞬で削れます。
ディスクは素材で決まる。鉄、アルミ、木、コンクリート
付けるディスクは「何をするか」と「何の素材か」の組み合わせで決まります。本体は100mmのディスクグラインダー1台で共通なので、迷うのはディスクだけです。素材ごとに書き出します。
| 素材 | 切る | 削る、落とす | 磨く |
|---|---|---|---|
| 鉄、ステンレス | 切断砥石 | オフセット研削砥石 | 多羽根ディスク |
| アルミ、銅、真ちゅう | 非鉄金属用の切断砥石 | 非鉄金属用の研削砥石 | 非鉄金属用の多羽根ディスク |
| 木材 | 使わない | ナイロンブラシ | サンディングディスク |
| コンクリート、タイル | ダイヤモンドカッター | カップ型のダイヤモンド砥石 | 使わない |
鉄とステンレスは、切断砥石で切り、オフセット砥石で削る
鉄の角パイプやボルトを切るなら厚さ1mm前後の「切断砥石」、溶接のビードやバリを削るなら厚さ6mmほどの「オフセット研削砥石」です。ステンレスは熱で変色しやすいので、ステンレス用と書かれた砥石を選び、押し付けずに動かし続けます。
仕上げまで自分でやるなら、砥粒の付いた羽根が重なった「多羽根ディスク(フラップディスク)」を#60から#120、#240と番手を上げて使うと、削りキズが細かくなっていきます。番手は前の倍くらいの数字を選ぶのが目安です。
アルミ、銅、真ちゅうは、非鉄金属用の砥石を選ぶ
アルミや銅は柔らかく、鉄用の砥石だと削りかすが砥石の目に詰まって切れなくなります。「アルミ用」「非鉄金属用」と書かれた切断砥石や研削砥石を使ってください。
目が詰まったまま押し付けると、砥石が焼けて割れることがあります。切れが悪いと感じたら、力を足すのではなく砥石を替えます。
木材は基本サンダー。グラインダーで触るならサンディングディスク
木は前の見出しのとおりサンダーの担当です。どうしてもグラインダーで木の面を整えるなら、ゴムパッドに紙やすりを貼る「サンディングディスク」を使い、番手は#80から始めます。
回転が速いので、同じ場所に1秒以上とどめると焦げ跡が付きます。塗装をはがすときは、ワイヤーブラシではなくナイロン製のブラシディスクにすると木を傷めにくいです。
コンクリート、ブロック、タイルは、ダイヤモンドカッター一択
コンクリート、ブロック、レンガ、タイルを切るときは、外周にダイヤモンドの粒を付けた「ダイヤモンドカッター」を使います。普通の切断砥石でも切れますが、減りが早く、粉が大量に出ます。
石を切ると粉じんが多いので、防じんマスクは必ず付けます。屋内で切るなら、集じん機をつなぐか、水をかけながら切れる湿式のカッターを選んでください。
初めての1台は100mmのディスクグラインダーでいい
DIYで最初に買う1台は、ディスク径100mmのディスクグラインダーです。砥石のサイズは100mm、125mm、150mm、180mmとあり、205mmまで作られていますが、ホームセンターに並ぶディスクの種類がいちばん多く、本体も軽いのが100mmです。
125mm以上は切り込みが深く取れる代わりに重く、長く持つと肩が疲れます。門扉のサビ落としやパイプの切断なら、100mmで足りない場面はほとんどありません。
コード式か充電式かは、使う場所で決める
庭や駐車場で使うなら充電式、作業場でコンセントが取れるならコード式です。コード式は安くて長時間回しても止まりませんが、コードを砥石で切る事故が起きるので、コードは肩に掛けて体の後ろへ回します。
充電式は、すでに持っている電動ドリルとバッテリーを共用できるメーカーを選ぶと、バッテリーを2つ買わずに済みます。
補助ハンドルと安全カバーは付いているものを
補助ハンドルは、跳ね返りが起きたときに両手で押さえるための取っ手です。付属していない本体は避けてください。安全カバー(といしカバー)も同じで、外して使うのは禁止です。
スイッチは、握っている間だけ回る「パドルスイッチ」型が、手を離せば止まるので初めての人に向きます。スライド式のロックが付いた型は、回しっぱなしにできて楽な反面、落としたときに止まらないので、慣れてからにしてください。
使い方は5ステップ。角度は15〜30度、押し付けない
使い方の流れは、業務用でもDIYでも同じです。材料を固定し、両手で持ち、砥石を15〜30度の角度で軽く当てて、奥から手前へ動かします。
- 電源プラグを抜くか、バッテリーを外してからディスクを付ける。ディスクに書かれた最高使用回転数が、本体の回転数以上か確かめる
- 材料をクランプか万力で固定する。手で押さえて切らない
- 保護メガネ、防じんマスク、革か樹脂の手袋を付ける
- 材料から離した状態でスイッチを入れ、1分ほど空回しして音と振動を確かめる
- 15〜30度の角度で軽く当て、奥から手前に動かす。押し付けず、砥石の重さと回転で削る
新品の砥石は食い込みが強いので、最初の数回はグラインダーを手前に引く方向で使うと跳ね返りが少ないです。力を入れるほど摩擦の熱が増えて、砥石も材料も傷みます。
切った直後の金属は数百度になっています。素手で触らず、冷めるまで置いてください。
跳ね返りは、深く切り込んだときと角に引っかけたときに起きる
キックバックは、回転している砥石が材料に食い込んで急に止まり、本体が跳ね上がる現象です。10mm以上深く切り込んだとき、材料の角に砥石の外周を引っかけたときに起きます。
防ぐには、一度に深く切らず、薄い切り込みを何回かに分けること、砥石の面を材料に押し当てないことです。両手で持ち、体の正面から少しずらして構えると、跳ねても顔に向かいません。
番手は倍ずつ上げる。飛ばすとキズが残る
磨きで番手を上げるときは、#60の次は#120、その次は#240のように、前の倍くらいの数字を選びます。いきなり#60から#400に飛ぶと、粗いキズが消えないまま細かいキズが重なり、ムラになります。
次の番手に替えるタイミングは、前の番手のキズの筋が全面で同じ向きにそろったときです。あえて前と違う方向に磨いて、古い筋が消えたかを目で確かめる方法が分かりやすいです。
軍手は禁止。火花は5m飛び、1700度になる
グラインダーで軍手を使ってはいけません。回転する砥石に繊維が巻き込まれると、指ごと引き込まれます。手袋は革か、滑り止め付きの樹脂製にしてください。メーカーの用語集でも、軍手ではなく素手か革手袋、樹脂の手袋をすすめています。
服装も火花の対象です。化学繊維のインナーは火花で溶けて肌に貼り付き、首元から着衣に火が移った死亡事故も起きています。綿の長袖と長ズボン、安全靴か革靴で作業します。
砥石を替えたら3分、作業前は1分の空回し
仕事でグラインダーを使う人には、労働安全衛生規則で「その日の作業を始める前に1分以上、砥石を取り替えたときは3分以上の試運転」が義務づけられています。砥石の取り替えと試運転は、特別教育を受けた人だけができる決まりです。
家のDIYにこの規則は掛かりませんが、割れた砥石が飛ぶ事故は同じように起きます。ディスクを替えたら3分、使う前に1分、体から離して回すのは家でも同じにしてください。回している間に音が変わったり、振動が大きくなったりしたら、そのディスクは使いません。
保護具は保護メガネ、防じんマスク、耳栓の3つ
火花と削りかすは目に向かって飛びます。普通の眼鏡では横から入るので、顔に密着する保護メガネかゴーグルにします。
石やモルタルを切る日は防じんマスク、金属でも長く使う日は耳栓です。音が大きいので、長く使う日は耳栓も付けてください。
グラインダーが要るか要らないかは、この3つで決まる
金属を切る、サビや溶接跡を削る、コンクリートやタイルを切る。この3つのどれかがあるならグラインダーが要ります。どれも無いなら、いまは買わなくて困りません。
- 木の面を整えたい → サンダー
- 包丁やドリルの刃を研ぎたい → 卓上グラインダー
- 鉄のパイプやボルトを切りたい → ディスクグラインダーと切断砥石
- 門扉や手すりのサビを落として塗り直したい → ディスクグラインダーとワイヤーブラシかサンディングディスク
- タイルやブロックを切りたい → ディスクグラインダーとダイヤモンドカッター
買うと決めたら、順番は「ディスク、本体、保護具」です。ディスクで作業が決まり、本体は100mmで足り、保護具は削らずにそろえます。
初めての1回目は、いらない鉄の端材で切断砥石を1回試してから本番に入ってください。砥石の当たり方と跳ね返りの感覚は、1回触れば分かります。
元々は充電式のポータブル電源や電動工具分野の専門アドバイザー。現在はキッチン家電や生活家電、カー用品まで幅広く担当しています。「毎日使うものほど、扱いやすさで選ぶ」が持論。
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